横浜ベイブリッジの「スカイウォーク」が復活――49億円の施設はなぜ再び注目されているのか
横浜ベイブリッジの下部に設けられた遊歩道「スカイウォーク」をご存じでしょうか。
横浜港を一望できる特徴的な施設ですが、実は開業後に利用者が大きく減少し、長期間の閉鎖を経験しています。
現在は再び一般公開され、横浜港の将来を眺めることができる施設として、新たな役割を担っています。
■ 約49億円をかけて整備された「スカイウォーク」
横浜ベイブリッジは1989年に開通しました。
その建設に合わせて、市民から寄せられていた「ベイブリッジを歩いてみたい」という要望などを背景に、橋に遊歩道や展望施設を設ける計画が進められました。
横浜市の資料によると、1980年度から調査研究が始まり、風洞実験などを行ったうえで、遊歩道、展望ラウンジ、エレベータータワーなどをベイブリッジに設置する計画が具体化しました。
そして1989年、ベイブリッジとともに「スカイウォーク」が開業しました。
建設費は約49億円。
当時としては非常に大規模な公共施設でした。
■ 開業直後は約79万人が利用
開業当初は大きな人気を集めました。
1990年度には約79万人が訪れたとされています。
ベイブリッジの高さから横浜港を眺められるほか、橋の構造を間近で見ることができ、横浜の新しい観光スポットとして期待されていました。
しかし、人気は長続きしませんでした。
1993年度には管理費などが収入を上回り、3,000万円以上の赤字を計上。
その後も年間5,000万円~1億5,000万円程度の赤字が続いたとされています。
1999年には年間利用者が約9万人まで減少し、2010年には横浜市の事業見直しの対象となりました。
■ 2010年、一度は閉鎖へ
利用者減少などを背景に、2010年9月、スカイウォークは一時閉鎖されました。
閉鎖直前には年間利用者が4~5万人程度まで減少。
建設時の市債の返済や赤字補填などを合わせると、累計約36億円に達したと報じられています。
巨額の費用をかけて整備された施設が、利用者の減少によって維持することが難しくなった典型的な事例と言えるでしょう。
■ しかし、2019年に再び脚光を浴びる
閉鎖されたスカイウォークに転機が訪れたのが2019年です。
きっかけとなったのが、横浜港に寄港する大型クルーズ船でした。
横浜港では大黒ふ頭などの港湾機能が強化され、大型外国客船の誘致も進みました。
すると、ベイブリッジの上から大型客船を眺めることのできるスカイウォークが、再び観光スポットとして注目されるようになりました。
一度は「利用者が少ない施設」となった場所が、横浜港の発展によって新しい価値を持つようになったわけです。
■ コロナ禍を経て、2022年に再々オープン
その後、新型コロナウイルスの感染拡大によって再び休業することになります。
そして2022年、施設は再々オープン。
ここでスカイウォークには、さらに新しい役割が与えられました。
それが「横浜港の将来を知る場所」です。
■ 「未来の横浜港」を見る場所へ
現在のスカイウォークでは、横浜港の歴史や港湾機能だけでなく、整備が進められている「新本牧ふ頭」についても紹介されています。
新本牧ふ頭は、大型コンテナ船に対応するための最新の物流拠点として整備が進められています。
横浜市では、スカイウォークを新本牧ふ頭の整備事業や海洋工事の技術、環境への取り組みなどをPRする施設として活用しています。
つまり現在のスカイウォークは、
「ベイブリッジを見る場所」から「横浜港の過去・現在・未来を見る場所」へ
と役割を変えているのです。
■ 公共施設は「作って終わり」ではない
スカイウォークの歴史から見えてくるのは、公共施設の難しさです。
開業当初は多くの人に利用されても、時代が変われば利用者のニーズも変化します。
一方で、施設そのものを簡単に撤去することもできません。
そこで重要になるのが、
「既存施設をどう活用し直すか」
という考え方です。
スカイウォークは、利用者減少によって一度閉鎖されましたが、横浜港の発展、大型クルーズ船の寄港、新本牧ふ頭の整備など、周辺環境の変化によって新しい役割を見つけました。
これは、横浜市の今後の公共施設やインフラを考えるうえでも興味深い事例です。
■ 横浜のインフラには、まだまだ「知られていない価値」がある
横浜には、横浜ベイブリッジをはじめ、港湾施設、道路、鉄道、公園、歴史的建築物など、さまざまな都市インフラがあります。
これらは単に「古くなったら取り壊す」というものではありません。
周辺地域の変化や観光需要、産業構造の変化によって、これまでとは違った価値を持つ可能性があります。
スカイウォークはその象徴的な例と言えるでしょう。
49億円という大きな費用をかけて造られ、一時は赤字や閉鎖という問題を抱えた施設。
それが現在では、横浜港の歴史だけでなく、これからの横浜港を眺める場所として再び活用されています。
「造る」だけでなく、「どう使い続けるか」。
これからの横浜のまちづくりや公共施設を考えるうえで、スカイウォークの歩みは一つの参考になりそうです。
参考資料
・横浜市「横浜ベイブリッジの建設史・スカイウォークの計画・建設経緯」
・東洋経済オンライン「49億円かけて建設→人気低迷で大赤字→閉鎖の憂き目に…横浜ベイブリッジにぶら下がる『謎の遊歩道』が復活するまで」





